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zoom RSS Serge VCO Using LM3900

<<   作成日時 : 2007/10/08 20:53   >>

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70年代のVCOだと思います。ネットにあった手書きの回路図を清書しました。
(この手書きの回路図には、明らかな間違いがありましたし、その後見たことのある本当のsergeVCOと回路図のスタイルが違うので、おそらく、基板からトレースしたものと思われます。読めない定数は「?」マークをつけてあります。)

画像


ノートンアンプLM3900の入力回路のトリックを最大限につかった回路のひとつがこのSergeのVCOです。トリックが少しでもわかりやすくなるように、内部回路の一部が見えるように、回路図を書きました。


■LM3900について:
まずキーとなる3900について説明します。当時3900は安価、かつ、そこそこの性能で、いろいろなトリックがつかえるアンプとして流行っていたようです。一世を風靡したといってもいいと思います。Paiaにも大量に使われています。

ノートンアンプは普通のオペアンプしか知らない人にはとっつきにくいと思いますが、入力段の回路を理解すれば何とかなります。もちろん詳細な内部回路も公開されています。

データシート他(アプリケーションノートは必見です):

  http://www.national.com/opf/LM/LM3900.html

オリジナルのナショナルセミコンダクターでは、製造中止とかいうことですが、TIのセカンドソースはまだ製造中のようです。

  http://focus.ti.com/docs/prod/folders/print/lm3900.html

■概要
さて回路の説明に移りましょう。

基本的にノコギリ波を発生するリセット型と呼ばれる発振回路です。まず全体像がわかるように、各能動素子の機能をあげておきます。

・U1bは積分器と指数変換
・Q1は積分器のコンデンサを放電するスイッチ
・Q2は積分器の出力のバッファアンプ
・U1cはコンパレータ
・U1aはCVの加減算、指数変換の温度補償
・U1dは波形変換

以下、順に説明していきます。

U1bは、カレントミラーの電流を積分します。積分用のコンデンサC3は27nと大きめになっています。これは、アンプのバイアス電流の影響を小さくするためだと思います。

U1cはコンパレータになっていて、積分された電圧に比例した電流を、R27からの電流と比較し、積分器からの電流が大きいと、出力がHiになります。出力がHiになると、積分器のコンデンサについているトランジスタスイッチがONし、コンデンサに積分された電荷が放電されます。
C6やR26はコンパレータにヒステリシスを持たせるための時定数回路です。Q2を確実に一定時間ONさせるためです。コンパレータの入力には、Sync入力が微分されて入っています。大きなパルスが入ると、コンパレータがONし、強制的にトランジスタQ1もONし、コンデンサがリセットされます。

ここまでで発振器らしくは見えてきたと思います。トリッキーなのは、CV系です。

■CV系
U1bは積分だけでなく、入力のカレントミラーで指数変換も行っています。カレントミラーは、+入力から見ると、ただの接地されたダイオードです。その電圧電流の関係はかなり精密な指数特性となっていることを使います。CVの加減算を行うU1aの出力が直接U1bの+入力に加わっています。R19は、U1aの出力電流、すなわちU1bの入力電流を制限するための保護用で、安心してアンプの出力電圧を直接+入力にいれるために必要な回路です。

ただし、ダイオード1個だけの指数変換回路は、温度特性がとても悪く、ちょっとした温度変化ですぐに周波数がずれてしまいます。その補償をU1aで行っています。温度特性の補償には2つの要素があります。平行移動と、傾きです。

(これら2つの要素については、以下のサイトに詳細な説明があります。
  日本語解説:
    http://synth-diy.seesaa.net/article/14727906.html
    http://synth-diy.seesaa.net/article/14883449.html
  英語解説:
    http://www.uni-bonn.de/~uzs159/expo_tutorial/index.html


このSergeのVCOでは、傾きについては補償はされていません。各CVに、VRがついているので、それで調整する仕様らしいです。

U1aでは巧妙に平行移動の補償をしています。U1aは、CVの加減算をしていますが、その基準は、NPNトランジスタのVbeです。ここを基準に、+入力と−入力の電流を加減算し、R17を乗じた電圧を出力します。Vbeは温度で変化しますが、これは、U1bのカレントミラーの温度特性を補償します。U1aとU1bは同じチップ上にありますから、熱的結合はとてもよいはずです。

U1aのCV系は差動入力になっていますが、これは以下の3つの理由があると思います。
・単一電源で処理するため、
・CVの効く向きを正負切り替えられるように
・U1aの入力端子の温度特性を極力キャンセルするため
 (−入力のVbeや+入力のカレントミラーの温度特性)
前2者は見ればわかると思いますので、3番目だけ説明します。

先ほど、−入力のVbeで指数回路の温度特性をキャンセルする、と書きましたが、このVbeの温度特性はCVにも影響します。Vbeの温度特性と、+入力のカレントミラーの電圧の温度特性は同じですから、それぞれの入力に接続されている抵抗が同じくらいであれば、各入力への電流の温度特性もほぼキャンセルされます。VR1とTrim1が−入力と+入力にそれぞれついていて、回路の対称性を意識しているのも、そのためではないかと思います。

Trim2からC5は、高域補償です。周波数が高くなるほど、コンデンサ放電の時間が問題になるため、あるいは、指数変換回路の精度が下がるため、正しいピッチより低めになります。
この高域補償回路では、出力のノコギリ波が微分されてCVに入力されています。ノコギリ波の周波数が高くなるほど、微分後の電圧が高くなります。これがCVに加算されるので、発振周波数も高めになります。高域補償の量は、Trim2で調整されているというわけです。

■波形変換
U1dは波形変換回路です。入力されたノコギリ波が折り返されて、三角波になります。ただし折り返しの電圧が外部から制御できますので、ここで音色の時間的変化をつけることができます。R22、R24、D8はクリップ回路です。

おわり

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
トラックバックありがとうございます。
この指数回路は、難解ですね。温度特性の相殺までに長い道のりがありますね。こんな回路よく思いついたなー、と感心します。
作るのも難しそうですね。
gan
2007/10/11 22:48
日本語の説明があるのはありがたいのでトラックバックさせていただきました。
houshu
2007/10/12 01:11

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