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zoom RSS CMOS VCF Using MC14069UB.

<<   作成日時 : 2015/07/19 14:54   >>

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今回は自分で設計したVCF回路の説明をします。

回路図:
http://www5b.biglobe.ne.jp/~houshu/synth/VcfMos0206.GIF

自分で言うのもなんですが、多分この回路を一目で理解できる人はほとんどいないと思います。機能的にはただの指数制御されるVCFなのですが、それを4000シリーズのCMOSで実現するためにトリックをたくさん使いました。

■予習

回路の基本は状態変数型フィルタです。オペアンプをインバータで置き換え、また積分器の時定数を変えるために、インバータを使った可変Gm素子(Gmは電圧を電流に変換する定数のこと。念のため。)を使っています。回路の説明の前に、導入した技術を個別に紹介します。

オペアンプをインバータで置き換えるというのは今ではそれほど珍しくはありません。EDP WASPやオーバードライブ
で使われています。

EDP WASP Filter:
http://machines.hyperreal.org/manufacturers/EDP/Wasp/schematics/
http://www.cgs.synth.net/modules/cgs49_twf.html
http://modular.fonik.de/pdf/Wasp%20Filter%20clone.pdf

MXR Hot Tubes:
http://gaussmarkov.net/layouts/hottubes/hottubes-schem.png

可変Gm素子(つまりOTA)としてCMOSのインバータを使うという方法はPearlのフェイザー PH-03で使われています。ただしこれは珍しくて製品はこれしかないと思います。PH-03については解説しています。

PH-3:
 http://houshu.at.webry.info/200511/article_1.html
 http://houshu.at.webry.info/200511/article_2.html
 http://houshu.at.webry.info/200511/article_3.html
 http://houshu.at.webry.info/200511/article_5.html
 http://houshu.at.webry.info/200512/article_1.html

Pearl PH-03ではCMOSインバータをOTAとして使っています。一応、簡易アンチログなどがあり、それらしいスイープになるはずなのですが、OTAのGm(トランスコンダクタンス)を小さくしたときに、CVに対するリニアリティが大きく落ちます。OTAのGmが小さくなり、オフになってしまいます。でもフェイザーでは、あまり低い周波数にスイープする必要がないので、あまり問題ではないようです。

CMOSインバータが可変Gm素子として使えることの説明:
http://www5b.biglobe.ne.jp/~houshu/synth/CmosOta.GIF

■回路の説明

このCMOSインバータを使ってVCFを作るには、フェイザーより広範囲の周波数を滑らかにスイープする必要があります。そのために、さらにこだわった工夫をしてみました。

工夫が少しでも分かりやすくなるように、状態変数フィルタにOTAを導入した構成からの変形として説明していきます。

画像


信号経路はOberheimなどと基本的な構成は同じです。OTAとミラー積分器で、可変の積分器を構成しています。
ただしOTAの制御回路が変わっています。Q4まではよくある指数変換回路ですが、ここで得られたI_expをOTAの制御電圧にするために、OTAのX3をオペアンプU4の負帰還に入れています。X3の入力には直流電圧Vsがかかっていて、このVsとGmの積として出てくる電流がI_expと等しくなるようにU4の負帰還が働きます。この負帰還のおかげで、OTAにおいて制御電圧とGmの関係を無理やり線形にすることができます。

この回路の周波数特性は以下のようになりました。

画像
Frequency Responses of the Circut with OTAs and Opamps.
OTA, OPAMPを使った場合の周波数特性.


さて次は、普通のOTAを、CMOSインバータを使ったOTAで置き換えます。

画像


まず、不正確なGmを、負帰還ループ内に入れることにより、それなりの精度で使えるようにしています。4069内のインバータ6個の特性が一致していることを期待して、2つをリニアリティ補償用に、1つを直流オフセット補償用に、2つを実際のフィルタ用にしました。(1つは無駄にしているのですが、この回路図では省略しています。)

一つのインバータの入力を意図的に一定電圧Vsだけずらし、出力が入力ずれVsとGmに比例した電流を出力するようにします。(インバータは1個でもいいのですが、なんとなく2個使って、フィルタでのGmの2倍になっています。比例関係は変わりません。)この出力電流がアンチログ回路に電流Iexpを供給します。Vs*2*Gm = Iexpになるので、GmはIcに比例するように、VbiasPos(とVbiasNeg)が制御されるわけです。

M23とM24の周辺は、CMOSインバータでつくったOTAの直流オフセットを補償するためです。もしNMOSとPMOSの特性が完全にコンプリメンタリならU5はただの反転増幅器でいいのですが、そうではないので、1つのインバータを使ってにして、出力がバイアス電圧1/2Vccと一致するようにVbiasNegを制御します。そして、このVbiasNegが他のインバータの制御電圧として供給されています。

この周波数特性は以下のようになりました。

画像


カットオフ周波数が低いところではカットオフ周波数が等間隔で並んでいて、CVに対する直線性がいいことが分かります。ただし高域にカットオフ周波数があるときには線が重なっています。これはインバータOTAで使ったMOS-FETのGmが、シミュレータのモデルでは不足しているためです。実際に作る場合にはMOS-FETでは十分にGmが高いものを選ぶ必要があります。私はパーツ屋で3種類購入して比較しました。結局使ったのはモトローラのMC14069でした。なんとセラミックパッケージです。かなりICが熱くなるのですが、セラミックパッケージなので少し安心です。東芝の4069でも動きましたが、プラスチックパッケージにしてはICが熱くなりすぎました。どこかの4069UBを使った場合はGmが不足でした。

最後に、オペアンプをCMOSインバータで置き換えると次の回路になります。CMOSインバータをオペアンプ代わりに使うために、基準電圧も、同じチップ内のCMOSインバータM11とM12で作っています。(無駄にしているインバータも記載しました。)

画像


シミュレーションではMOS-FETのGmが小さすぎるようで、オペアンプの代わりとは言い難く、ひどい特性でした。

もちろん実機ではそれなりのVCFになっています。

おわり。

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